第6章 子どもの小学校区で土地を探したい
2026年03月25日
第6章 子どもの小学校区で土地を探したい
見付太郎は、少し視線を変えて問いかけた。
「今回の土地探しですが——
良地さんは“学区”についてはどのようにお考えですか?」
その瞬間——
「それは絶対条件です。」
間髪入れず、夢見子が答えた。
「今と同じ小学校の学区がいいです。
友達もいますし、生活も便利で気に入っていますから。」
強い意志を感じた。
見付太郎はやさしく頷いた。
「なるほど、とてもよく分かります。
実際に、学区を限定して土地を探される方は非常に多いです。」
そして、少しだけ視線を僕に向けた。
「ご主人はいかがですか?」
僕は少し迷いながら答えた。
「正直に言うと……
そこまで学区にはこだわっていません。
それよりも——
通勤時間をもう少し短くしたいんです。」
夢見子が少しだけこちらを見る。
「今は1時間近くかかっているので、
できれば30分以内が理想ですね。」
見付太郎はゆっくり頷いた。
「なるほど……
つまり——」
👉 奥様は「学区重視」
👉 ご主人は「通勤重視」
「ご夫婦で優先順位が少し違う、ということですね。」
「……そうですね」
夢見子が静かに答えた。
「主人の気持ちは分かっています。
でも……やっぱり子どものことを考えると——」
その気持ちは、痛いほど分かる。
見付太郎は、少しだけ間を取って言った。
「どちらも、とても大切な考えです。
だからこそ——」
👉 ここは一度、しっかり話し合う必要があります。
僕たちは黙って頷いた。
「そしてもう一つ——
とても大事なことをお伝えします。」
空気が少し引き締まる。
「“学区で土地を選ぶ”ということは——
👉 探すエリアを極端に狭めることになります。」
確かにそうだ。
「その結果——
・価格が高くなる
・土地が見つかりにくい
・条件の妥協が増える
こういったことが起こりやすくなります。」
夢見子が少し考え込んだ。
「……たしかに、この辺りは土地高いですよね。」
「そうですね。
駅に近く利便性も高い分、資産価値はありますが——」
見付太郎は、少しだけ表情を引き締めた。
「その分——
👉 土地に予算を取られすぎるリスクがあります。」
「リスク……ですか?」
「はい。
例えば、本来1,500万円で考えていた土地を
2,400万円で購入してしまった場合——」
👉 建物の予算を削るしかなくなります。
僕はハッとした。
そのとき——
見付太郎が一枚の資料を差し出した。
「例えば、こちらの物件です。」
「80坪で2,400万円……」
僕は思わず言った。
「広いですね。
庭でバーベキューとかできそうですし……見てみたいです。」
見付太郎は少し笑った。
「いいですね。憧れますよね。」
そして——
「ですが——
👉 今はまだ見に行くべきではありません。」
「え?」
「理由はシンプルです。」
👉 “順番が違うから”です。
空気が一変した。
「土地を先に買ってしまうと——」
見付太郎は、はっきりと言った。
👉 ほぼ確実に失敗します。
「えっ……そんなにですか?」
「はい。
これは断言できます。」
僕は思わず前のめりになった。
「どうしてですか?」
「それは後ほど詳しくお話しします。
ですが——」
見付太郎は静かに続けた。
「土地は“条件の一部”に過ぎません。
本来は——」
👉 建物
👉 資金計画
👉 ライフプラン
これらすべてを踏まえて
“バランスで決めるもの”です。
「それを無視して
👉 学区だから
👉 良さそうだから
という理由だけで土地を決めてしまうと——」
👉 全体のバランスが崩れます。
僕は何も言えなかった。
見付太郎は、静かに問いかけた。
「ここで一つ、考えてみてください。」
👉 学区や通勤時間は——
10年後、30年後も絶対に変わらない条件でしょうか?
その言葉に、思考が止まった。
「お子さんはいずれ卒業します。
通勤先も、将来変わる可能性があります。」
確かに——
「一方で、家は何十年も残ります。」
言葉が、深く刺さる。
「だからこそ——」
👉 “今の条件”だけで決めないこと。
「もっと本質的な視点で考える必要があります。」
僕はゆっくり頷いた。
「……一度、ちゃんと話し合ってみます。」
「ぜひそうしてください。」
見付太郎は、最後にこう付け加えた。
「そしてもう一つだけ。
将来は誰にも分かりません。」
一拍おいて——
「だからこそ大切なのは——」
👉 “どうなっても困らない選択”をすることです。
「住み続けてもいい。
貸してもいい。
売ってもいい。」
👉 どんな未来にも対応できる家。
「それが——
本当に“良い物件”だと、私は考えています。」
僕たちは静かに顔を見合わせた。
