第5章 マイホームを持つきっかけ
2026年03月25日
第5章 マイホームを持つきっかけと居住期間
見付太郎は、やわらかい表情で話を続けた。
「ところで——
良地さんは、今回なぜマイホームを探そうと思われたのですか?」
「何か“きっかけ”のようなものがあったのでしょうか?
差し支えなければで構いません。
物件をご提案する上でのヒントにしたくて。」
僕は少し考えてから、ゆっくり話し始めた。
「結婚当初は、今のアパートでも十分だったんです。
でも——」
自然と苦笑いが出た。
「家族が増えて、正直もう手狭ですね。
実は……妻のお腹に、2人目の子どもがいるんです。」
「それはおめでとうございます。」
見付太郎が優しく言った。
「ありがとうございます。
子どもが成長するにつれて荷物も増えてきて、
収納も足りなくて……
どの部屋も“とりあえず置いた物”で溢れている感じで。」
頭の中に、今の部屋の様子が浮かぶ。
「なんというか——
家にいても落ち着かないんですよね。」
見付太郎は静かに頷いている。
「それに最近はリモートワークも増えて、
家にいる時間自体が長くなりました。
そうなると余計に……
ちゃんとした家に住みたいな、って。」
「なるほど。」
「子どもも再来年には小学校に入るので、
そろそろ考えないとなと。
妻も学区のことを気にしていますし。」
そして少しだけ照れながら言った。
「あと……同僚とか友人が、家を買い始めていて。
年賀状とかで
“家建てました!”って写真付きで来るじゃないですか。」
見付太郎が少し笑った。
「ありますね。」
「別に焦っているわけではないんですが……
やっぱり、ちょっと意識しますよね。」
「とてもよく分かります。」
見付太郎は共感するように頷いた。
「マイホームを持つ“きっかけ”は人それぞれですが——
今お話しいただいたように
👉 子どもの成長
👉 住環境の変化
👉 周囲の影響
このあたりが重なるケースは非常に多いです。」
そして少しだけ、話の角度を変えた。
「ではもう一つ——
とても大事な視点をお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「はい。」
「これから購入するマイホームに——
お子さんは、あと何年住むと思いますか?」
僕は一瞬、考えた。
「えっと……」
「例えば、今4歳のお子さんが
これから小学校に入り、
高校卒業の18歳まで住むとすると——」
👉 約14年間です。
「……14年」
思ったより短い。
「もちろん、その後も一緒に住む可能性はあります。
ですが——
大学、就職、結婚などを考えると
家を出るケースの方が多いのが現実です。」
僕は黙って聞いていた。
「つまり——
お子さんとその家で過ごせる時間は
意外と“限られている”ということです。」
部屋が少し静かになった。
「一方で——
ご夫婦はどうでしょうか?」
僕はハッとした。
「仮に35歳で購入した場合、
その後40年、50年と
その家で生活する可能性があります。」
👉 夫婦で過ごす時間の方が、圧倒的に長いのです。
言われてみて、初めて気づいた。
「ですから——」
見付太郎は、穏やかに、でもはっきりと言った。
「“きっかけ”として
👉 お子さんのために家を考える
これはとても素晴らしいことです。」
そして——
「ただ、長い目で見たときには
👉 “ご夫婦自身のための家”として考えること
これも同じくらい、いやそれ以上に大切ではないでしょうか。」
僕は、言葉を失った。
今までずっと——
「子どものために」と思っていた。
でも本当は違うのかもしれない。
この家で、一番長く暮らすのは自分たちだ。
見付太郎は最後にこう言った。
「誰のための家なのか——
ここを一度、整理してみると
選び方が大きく変わってきますよ。」
僕は、ゆっくりと頷いた。
