第3章 今買うと、あと何年住めるのか?

2026年03月25日

 

第3章 今買うと、あと何年この家に住めるのか?

 

見付太郎は、少し間を置いてから話し始めた。

「ところで——

そもそも、マイホームは
本当に購入する必要があるのでしょうか?

僕は一瞬、言葉に詰まった。

「住まいに対する考え方は、人それぞれです。

転勤の可能性がある方。
将来、ご実家に戻る予定のある方。

そういった方は、あえて購入せず
賃貸住宅の“柔軟性”を選ぶ場合もあります。」

確かに——
言われてみればその通りだ。

「良地さんはいかがですか?」

僕は少し考えてから答えた。

「……やっぱり、自分の家が欲しいです。
小さくてもいいので。

その点は、妻も同じ考えです。」

見付太郎はゆっくり頷いた。

「分かりました。
それではここからは“購入する前提”でお話しします。」

そして——
少しだけ空気を変えて、こう続けた。

「では、少しだけ現実的なお話をしますね。

突然ですが——」

一瞬、間が空く。

「良地さんは、あと何年生きられると思いますか?」

「……え?」

思わず声が漏れた。

「申し訳ありません。驚きますよね。

ではこう言い換えましょう。

日本人の平均寿命は——
男性が約81歳、女性が約87歳です。」

僕は頭の中で計算した。

「僕は35歳なので……あと46年。
妻は31歳なので……あと56年くらいですね。」

「ありがとうございます。」

見付太郎は静かに頷いた。

「今の計算は、あくまで平均寿命まで生きた場合です。

ですが——
どう感じましたか?」

僕は少し考えた。

「……思ったより長いな、と思いました。」

見付太郎は、少しだけ微笑んだ。

「そう感じる方もいれば——

“あとそれだけしかないのか”と
感じる方もいらっしゃいます。」

そして、ゆっくりと言った。

「ただ、一つだけ言えることがあります。

それは——

誰にとっても、残りの人生には限りがあるということです。

部屋の空気が、少し静かになった。

「そしてその限られた時間の中で——

家族が一番長い時間を過ごす場所。

それが、マイホームです。」

僕は無意識に、夢見子と家継の顔を思い浮かべていた。

「例えば、今マイホームを購入したとします。

仮に35歳で購入した場合——
あと40年以上、その家で暮らす可能性があります。」

40年——

思った以上に長い時間だ。

「つまりマイホームとは、

“今のため”だけではなく

👉 これからの人生そのものを左右する存在

だということです。」

僕は思った。

「なんとなく欲しい」で決めていいものじゃないな……

見付太郎は、さらに続けた。

「だからこそ大切なのは——

👉 今だけで判断しないこと
👉 将来も見据えて考えること

です。」

そして、少しだけ声のトーンを落とした。

「もし仮に——

“なんとなく”で選んだ家に
40年住み続けるとしたら……どうでしょう?」

僕は何も言えなかった。

「逆に——

しっかり考えて選んだ家であれば、
その40年は、きっと豊かな時間になります。」

静かに言葉が胸に入ってくる。

マイホームは

ただの「建物」ではない。

人生の時間を入れる“器”なのかもしれない。