第2章 『住まい』に対する夫婦の違い

2026年03月25日

 

第2章 『住まい』に対する夫婦の違いを知る

 

〜見付太郎との出会い〜

次の日曜日。

僕たちは磐田市内の不動産会社を訪れた。
そこで出会ったのが——

土地選び案内人
『たまたまご縁不動産 見付太郎』

だった。

席に案内され、簡単な挨拶を済ませたあと、
いわゆる“お決まりのアンケート”を記入する。

書き終えた僕は、正直な気持ちをそのまま伝えた。

「マイホームが欲しいとは思っているんですが、
何から始めていいのか全く分からなくて……。

とりあえず土地がないので、
土地を探しに来ました。

どこか良い土地はありませんか?」

見付太郎は、にこやかに頷いた。

「住宅用地をお探しですね。ぜひお任せください。

ちなみに良地さんは、
どのようなお家をお考えですか?

すでに住宅会社さんとはお話されていますか?」

「いえ、まだ何も……。今日が本当に最初です。
息子が再来年、小学校に入るので、それまでにはと考えているんですが……」

僕がそう答えると、見付太郎は少しだけ表情を引き締めた。

「なるほど。楽しみですね。

ただ——
土地からマイホームをお考えの方には、
必ず最初に知っていただきたいことがあります。」

その一言で、場の空気が少し変わった気がした。

「マイホームの購入は、大きな買い物です。
将来『失敗した』と思いたくはありませんよね。

もちろん多少の勢いも必要ですが、
決して“急いで決めるもの”ではありません。

実は、きちんとした“順番”があるんです。」

そして見付太郎は、少し笑ってこう言った。

「今日は土地のご紹介というよりも——
その“順番”のお話をさせていただきたいと思います。

名付けて……」

少し間を置いて、

『良地得太郎様のための
失敗しない土地選びセミナー』です。

僕と夢見子は思わず顔を見合わせた。

「内容としては、どんなに急いでも2〜3時間はかかります。

通常であれば、10時間以上かけても
伝えきれない内容かもしれません。

それを今日は、ぎゅっと凝縮してお伝えします。」

「……ぜひ、お願いします!」

僕たちは迷わずそう答えていた。

見付太郎は満足そうに微笑き、ゆっくりと話し始めた。

「では、まず最初に。

“土地を買う”ということは、
少し難しい言い方をすると——

土地の所有権を取得することです。」

突然の専門用語に、僕は少し身構えた。

「ただし、所有権を持ったからといって、
何でも自由にできるわけではありません。

都市計画法、建築基準法、消防法……
様々なルールの中で利用する権利です。

しかしその代わり——

その土地は半永久的に利用でき、
お子さんに引き継ぐこともできます。」

「なるほど……」

正直、難しい話だったが、
なんとなく“すごいものを買おうとしている”ことは伝わってきた。

見付太郎は続けた。

「そしてもう一つ大事なことがあります。

マイホームは——
贅沢品ではありません。

生活必需品です。

僕は少し意外に思った。

「衣・食・住と言いますよね。
その“住”がマイホームです。

ただし——」

見付太郎は少しだけ前に身を乗り出した。

「私たちは“食べること”や“着ること”は
自然と学んできました。

しかし“住まい”については——
意外と学ぶ機会が少ないんです。」

「……確かに」

僕は思わず頷いた。

すると見付太郎は、ゆっくりと核心に入っていった。

「ここからが大事な話です。

良地さん、夢見子さん——

ご夫婦で“住まいに対する考え方”は同じですか?

僕たちは一瞬、言葉に詰まった。

「人は、生まれ育った環境によって
住まいに対する価値観が大きく変わります。

例えば——」

見付太郎は指を折りながら話し始めた。

・戸建てか、マンションか
・持ち家か、賃貸か
・広い家か、コンパクトな家か
・新しい家か、古い家か
・整理整頓されていたかどうか

「さらに言えば——
ご実家の地域や生活スタイルでも変わります。

例えば、雪国と静岡では
住宅に求めるものは全く違います。」

僕は夢見子の方を見た。

確かに——
今までそんな話、ちゃんとしたことはなかった。

「つまり——」

見付太郎はゆっくりと言った。

「夫婦で“当たり前”が違うんです。」

その言葉は、思った以上に重かった。

「だからこそ、最初にやるべきことは

👉 良い土地を探すことではありません

👉 夫婦で価値観をすり合わせることです

部屋の空気が静かに変わった。

「すべてを一致させる必要はありません。

ですが——
お互いに“譲れないポイント”は必ずあります。

それを理解し合うこと。

それが、失敗しないマイホームの第一歩です。」

僕は、心の中でつぶやいた。

「なるほど……」

マイホームは
ただ“買うもの”ではない。

“家族で作るもの”なのかもしれない。